17. インポート/エクスポート¶
本章は、開発環境で作った定義を別のテナントや別の環境へ移す作業を扱います。順序を誤ると動作せず、取り込み方によっては既存のデータが失われるため、本章の手順に沿って作業します。対象は定義体のみであり、精度評価のデータセットは「精度評価」、監査ログの CSV エクスポートは「監査ログ」を参照してください。
本章の読者は「Accel Agent 管理者」です。インポート・エクスポートの画面はいずれも管理権限を要するため、参照のみのロールでは画面にすら到達できません。本番環境への取り込みを運用担当が行う場合も、本章の手順に沿えば作業を完了できます。
17.1. インポート・エクスポートできる対象¶
インポート・エクスポートの対象は、エージェント定義、ナレッジベース、ロジックツール、MCP、スキル、AIモデルです。いずれも、それぞれの管理画面にある「インポート」「エクスポート」から操作します。対象ごとに、資材の形式、含まれないもの、取り込み方式、秘匿情報の有無が異なります。
| 対象 | 操作する画面 | エクスポートされる資材 | 取り込み方式 |
|---|---|---|---|
| エージェント定義 | エージェント管理 | agent_data.json | 同じ ID のものを上書き |
| ナレッジベース | ナレッジベース管理 | knowledge_data.zip | 差分同期(資材に無い既存アイテムは削除) |
| ロジックツール | ツール管理 | logic_tool_data.json | 同じ ID のものを上書き |
| MCP | ツール管理 | mcp-server.json | 同じ ID のものを上書き |
| スキル | スキル管理 | skill_data.zip | 洗い替え(1 件でも不正な内容があると全体が失敗) |
| AIモデル | AIモデル管理 | ai_model_data.json | 同じ ID のものを上書き |
資材に含まれないものや秘匿情報の扱いは「エクスポートの注意点」、取り込み時の挙動は「インポートで何が起きるか」で確認します。
17.2. 共通の進め方と事故への備え¶
どの対象も、資材をアップロードしてから内容を確認し、実行するという 2 段階の方式で進みます。確認画面で状態を示す単位と、示される状態は対象によって異なります。
- ロジックツール・MCP:1 件ごとに「新規」「更新」「変更なし」を示します。
- ナレッジベース:カテゴリごとに「新規」「更新」「変更なし」を、ナレッジベースごとに「新規」「更新」を示します。ナレッジベースは内容が同じでも、インポート先に同じ ID のものがあれば「更新」と表示されます。
取り込みを実行する前には、必ずインポート先を先にエクスポートして退避します。取り込み後に元の状態へ戻す手段は用意されていないため、これが唯一の備えです。ナレッジベースは、退避のためのエクスポートそのものが失敗することがあるため、先にアイテムの状態を確認しておきます。MCP を含む資材には認証情報が含まれるため、秘密として保管し、受け渡しします。
17.3. インポート先の前提とインポートの順番¶
画面の外で済ませておく事項は、何をインポートするかによって変わります。すべてが常に必要なわけではないため、対象に応じて確認します。
| 事前に済ませておく事項 | 必要になる場合 | 手順 |
|---|---|---|
| テナント環境セットアップのベクトルデータベース接続 | ナレッジベースをインポートする場合 | 「ベクトルデータベース接続設定」 |
| 生成AI 連携ドライバ設定 | AIモデルをインポートする場合 | 「生成AI連携ドライバ設定」 |
| ジョブの設定 | ナレッジベースをインポートする場合 | 「ジョブネットの作成と有効化」 |
| IM-BPM の導入 | 用途に「BPMタスク」を含むエージェント定義をインポートする場合 | 「IM-Juggling プロジェクトの編集」 |
| OAuth プロバイダ設定 | OAuth 認証を使う MCP サーバをインポートする場合 | 「OAuth の認証プロバイダを登録する」 |
| ロジックフローのインポート | ロジックツール、またはロジックフロータスクを使うエージェント定義をインポートする場合 | IM-LogicDesigner仕様書の「インポート・エクスポート」 |
そのうえで、AIモデル、次にナレッジベース・スキル・MCP・ロジックツール、最後にエージェント定義、という順でインポートします。ロジックツールは、参照するロジックフローをIM-LogicDesignerでインポートした後に取り込みます。参照先のロジックフローがインポート先に無くても取り込みは止まらず、インポート結果の詳細に警告が表示されます。エージェント定義がAIモデルを解決できないまま取り込まれた場合、取り込み自体は止まらず警告として記録されますが、そのエージェントはまったく動作しません。これに対して、ナレッジベース・ツール・スキル・MCP が未解決の場合は、その部品を使う場面だけが失敗します。
ナレッジベースをインポートする場合は、扱いが異なります。埋め込みモデル(AIモデル)を解決できないと、そのナレッジベースのインポート自体がエラーで止まり、取り込めません。
注意
インポート先で定義を手作業で作り直すことは避けてください。エージェントID・AIモデルID・ナレッジベースID には新規作成時に自動で採番された値が入るため、同じ値を入力し直さずに作り直すと ID が変わり、参照が切れます。ツールID と Skill ID は、環境をまたいで同じ値になるようそろえてください。
17.4. エクスポートの注意点¶
資材ごとに、含まれる内容と注意点が異なります。
- エージェント定義: 参照しているナレッジベース・ツール・スキル・AIモデルは含まれません。インポート先では、ID が一致するものを参照します。
- ナレッジベース: ベクトルデータ本体が含まれるため、容量が大きくなります。配下のアイテムに、待機中・処理中・エラー・メタデータ同期失敗のいずれかが 1 件でも含まれる場合は、エクスポートできません。
- ロジックツール: 参照するロジックフローの定義は含まれません。ロジックフローはIM-LogicDesignerでエクスポートします。
- MCP: 認証方式が API キーの場合は、管理時・実行時の API キーが平文で含まれます。追加の HTTP ヘッダも、設定した値のまま含まれます。これらを含む資材は、秘密情報として保管し、受け渡します。OAuth の場合は、使用する OAuth プロバイダの指定だけが含まれ、認証情報は含まれないため、インポート先でも同じ OAuth プロバイダを設定しておきます(「MCPサーバに接続する」)。
- AIモデル: 接続先や API キーなどの認証情報は含まれません。認証情報は生成AI連携ドライバ設定で管理するため、インポート先でも同じ設定をしておきます(「生成AI連携ドライバ設定」)。
17.5. インポートで何が起きるか¶
取り込み時の挙動は、対象ごとに異なります。
ナレッジベースのアイテムは差分同期です。資材に含まれていない既存のアイテムは削除されます。インポートの確認画面では、削除されるアイテムは表示されません。
取り込む前に、インポート先のナレッジベースをエクスポートして退避してください。意図しないアイテムが削除された場合は、退避した資材をインポートし直すと、退避した時点の状態に戻せます。
ベクトルデータ(チャンク)だけは差分同期の対象外です。資材にベクトルファイルが含まれるかどうかに関わらず、そのナレッジベースの既存チャンクをいったん全件削除してから、資材の内容で登録し直します。取り込み中は、該当ナレッジベースの検索結果が一時的に欠ける、または空になることがあります。
無効化されているナレッジベースを、インポート先で有効かつ利用中(いずれかのエージェントに割り当て済み)のナレッジベースへ取り込もうとすると、行エラーになり取り込めません。
スキルは洗い替えであり、1 件でも不正な内容が含まれていると、取り込み全体が失敗します。それ以外の対象は、同じ ID のものを上書きする方式です。
エージェント定義の取り込みでは、次のような場合に警告が表示されます。インポート先で公開中だったバージョンが非公開に変わるケース(稼働中の環境では、呼び出し元に即座に影響します。「バージョンの更新と進行中案件」)、参照を解決できないケース(該当箇所の呼び出しだけが失敗する)、AIモデルを解決できないケース(エージェントの復元自体が失敗し、まったく動かなくなる)です。なお、インポート先ですでに削除されていたバージョンが復活することもありますが、これは警告としては表示されません。
用途に「BPMタスク」を含むエージェント定義を、IM-BPM が未導入の環境へ取り込んでも、この用途は保持されます。編集画面ではチェックボックスが表示されなくなるだけで、値は消えません。後から IM-BPM を導入すれば、そのまま呼び出せます。エージェントは公開しない限り呼び出し元から使えない点は、「業務に組み込む」と共通です。
17.6. インポート後に確かめること¶
インポートが終わったら、次の点を確認します。
- 公開状態: エージェント定義のインポート結果に、公開中だったバージョンが非公開に変わった旨の警告が出ていないか確認します。該当する場合は、必要なバージョンを公開し直します(「インポートで何が起きるか」)。
- 参照切れ: インポート結果に、参照先(AIモデル・ナレッジベース・ツール・スキル)を解決できなかった旨の警告が出ていないか確認します。該当する場合は、不足している資材をインポートするか、エージェント定義の割り当てを見直します。
- ジョブの設定: ジョブネットはインポート・エクスポートの対象外です。インポート先でも、必要なジョブネットが作成・有効化されているか確認します(「ジョブネットの作成と有効化」)。
- AIモデルの単価: 単価は資材に含まれてインポートされます。インポート先で利用する契約や料金がインポート元と異なる場合や、単価が未設定のまま取り込まれた場合は、コストが正しく集計されません。単価がインポート先の環境に合っているか確認します(「AIモデル管理」)。